夫の上手な操縦法~手のひらの上で踊らせる?
浮気をするのは、女性より男性のほうが圧倒的に多いと言えます。
これは、人間が生物の本能として持っている部分で、「ばらまきたい男」と「選びたい女」に役割を分担してきた結果でもあります。自分の遺伝子をばらまくという行為は、浮気することに他なりません。
しかし人間は社会的存在ですから、法律、道徳、常識、良心等によって本能のままに行動することはありません。が一方で、男は妻に社会的役割を期待する部分はあります。
それが満たされないと、男は浮気に走る場合もあるのではないか、というのが本章の主題です。
ただし誤解しないでください。浮気する男性を擁護する目的は一切なくて、浮気する男性の深層心理をちょっと探ってみようということです。
長男としての保守的な考え
長男イコール跡取りに象徴される「家長制度」はもはや過去の遺物となったようでいて、案外日本人の心に生きています。それは年齢が高いほど強く、長男である男たちの多くは、やがて家や家業を継いだり、両親が年老いたら面倒を見たりしなくてはならないと考えています。
親の介護も相続権も子供は皆平等といっても、「長男ならこうあるべき」という考えが形成されてくるのは、一見なくなったようでいて日本社会の伝統あるいは風土の底辺に存続している考えが残っているためと言っていいでしょう。
そんな長男は、結婚すると妻には自分の親と同様に接してもらいたいと思いますし、共働きなら子供を朝実家に預けに行くなど、日常の細かいことは、妻にしてほしいと考えます。そうして妻が夫の実家に子供を送って行き、迎えに行った夕方、母親が夕食にと何かくれたときには、長男は皆で美味しく食べたいとも考えます。
しかしそこで妻が「おかずを持たせるなんて、私へのあてつけだわ」と考えると、事はややこしくなります。
世の中に男と女がいて、男と女は磁石のS極とN極のように惹かれ合っても、同性同士は反発する傾向があります。俗に言う「嫁姑問題」は、女性同士の反発とも言えます。男にもそれはありますが、例えば夫と妻の父親はあまり反発することはありません。むしろお互いを尊重し、義父は義父、自分は自分と棲み分けをします。
ただしこれは一般論であって、世の中の女性や男性が皆そうだというわけではありません。
つまり嫁姑問題は、女性が2人いることによって生じることで、古今東西を問わず結婚に伴って起きる問題でもあり、ある意味永遠のテーマと言えるでしょう。
しかし一方で、夫からすれば姑とは、かけがえのない母親に他ならず、端的に言うと、男の心に占める母親のポジションは、妻で置き換えることはできないものです。
また姑からすると息子の妻(「嫁」とも言いますね)は、愛する息子を奪った女と映ることもあるようで、若干の嫉妬が含まれる場合もあるようです。
1人の息子をめぐって2人の女の思惑が交錯し、同時に女同士の思惑が反発するのです。しかし当の息子にとってそのような事態はあまり目に入らず、妻は母親と仲良くやってほしいと本音では思っています。
男の隠された本音
そこから発展して、男が妻に求める本音をまとめると、次のようになるでしょう。
(1)母親とは仲良くやってほしい
自分を生んでくれた母親、かけがえのない母親とは上手くやってほしいと思う気持ちで、長男に限らず、男は皆こう思っています。
(2)家庭のことは全てやってほしい
30代、40代となると仕事上の責任も増え、帰宅が遅くなることもあるでしょう。自分は仕事に専念し、子供の教育や近所付き合いは妻に任せたいと思っています。
(3)休日は一人の時間もほしい
女性は会話がストレス発散になりますが、男はむしろ孤独を好むものです。妻子がいても、たまには趣味に没頭したり、一人でドライブしたりしたくなります。
(4)妻は一歩下がっていてほしい
そして男は、オスとしてメスを征服したいと思っています。社会的存在として言えば、妻からは夫として男として立ててほしいと思うものです。
これらをまとめて言えば、男の本音とは、自分は仕事に集中するから、そのぶん休みは趣味に専念したい。子供のことや近所のことも頼む。母親とは上手くやってくれ。そして、いつも綺麗で優しい妻でいてもらいたい。
ということになります。
男のプライド
しかし、実際の生活はそういかないことも多々あります。
共働きであれば、妻も疲れていますし、子供や近所付き合いを一手に引き受けることは無理なこともあるでしょう。育児のストレスから、妻だって休日には友達と女子会やらカラオケにも行きたいし、デパートでゆっくり洋服を見たいこともあるに違いありません。
そして男は、ここまでは十分理解できます。
「たまにはゆっくりしてきなよ」と妻をデパートに送り出すことも苦ではありません。
しかし我慢できないのは、実家をけなされたり、給料が安いと文句を言われたりしたときです。実家とは自分が生まれ育ったところですし、給料とは社内における自分の地位と貢献度そのものです。
それらをけなされることは自分の存在を否定されることに等しく、傷つき、不愉快になります。
「こんなはずではなかった」
と落胆し、帰宅途中に寄り道したり、社内の若い女性に目を向けたり、自宅の寝室を別にしたりということは、ここから始まります。
男とは、とてもプライドの高い生きものなのです。
他にも、持ち物や洋服のこだわりなど、女性からすれば、「そんなことを気にするの?」と思う箇所があるかもしれません。
しかし、それらを決してけなすことなく、表面的には一歩下がって(心理的には一歩上手でいいのです)、それらを容認して温かく見守ってくれる女性を男は望んでいるのです。
夫の上手な操縦法
つまり、多くの男が求める妻とは、自分を男として立ててくれて(プライドを満たしてくれて)、家事やつきあいを上手にしてくれる女性であるのです。
でも女性の側からすれば、一見夫が支配しているように見えても、実は財布の紐は自分が握っている、家事やつきあいも上手にしているようでも「ここから先は夫に任せる」という線を引いてしまうのが賢明なやり方です。
使い古された言い方をすれば、
「男は、妻の手のひらの上で踊らされている」
でちょうどいいのではないでしょうか。
それが満たされないと、夫の関心は外に向かうことが多くなります。それが浮気の始まりです。
男とは、プライドを満たしてあげると、動かしやすい生き物なのです。